流石、岩波文庫:『イスラーム文化』を読んで
地下鉄サリン事件の裁判がすべて終わりました。カルトの恐ろしさということで語られる事件でありますが、終末論とか解脱とか、宗教的な教義は他の宗教と比べて特異であったとは思えません。教祖が宗教的天才であったかは疑問ですが、組織がだんだんと世間に対して攻撃的になっていった印象があります。教義に惹かれていった人たちは、純粋に宗教的な修行に憧れていただけに思えてならないのです。
前にも少し書きましたが、宗教は社会の道徳的規範を守る方向に働いてくれないと現代で価値がないのではないでしょうか。
それはともかく、読み終わった本の紹介
『イスラーム文化 その根底にあるもの』井筒俊彦 1991年 岩波文庫
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/33/X/3318510.html
コーランの日本語訳もされている大先生の講演録。非常に分かりやすく書いてあって、全くの初心者でも大枠が分かった気になれました。
ユダヤ教・キリスト教との関係。最後の預言者ムハンマドが啓示を受けた「コーラン」と彼の言行録「ハディース」。現世を聖世界として宗教と法律が結びつく社会で生活する(=宗教活動である)スンニー派。そのイスラーム共同体と他の宗教グループとの折り合いのつけ方。逆に密教的に進んだシーア派とゾロアスター教の影響。とても読みやすく解説されています。
終末論を唱えるイスラム教は、その教義のもと広く受け入れられて、政教分離などありえない社会を作りあげています。きっとそれは歴史的必然であり、多くの人間に信仰される神は尊敬すべき神であることは間違いないと思っています。私は文化的バックボーンからして、一神教を信仰することはないでしょうけど、イスラム教や他の宗教を理解しようとする姿勢は持ち続けたいと思います。